大正13年、小美玉市内に創建された平屋建ての民家。周囲には同様の民家も点在し、落ち着いた街並みを形成しています。戦後に増築された部分は減築し、創建当初に戻すとともに、現代の生活スタイルや将来のご家族構成を視野に入れたプランとして再生しました。
建物をリフトアップ、基礎を新設、土台も新しく交換し、安全性・耐久性を高めました。
創建時の柱・梁等の構造材を生かし、古民家の持つ雄大な雰囲気をそのままに、作り込まれたお仏壇や神棚は新たな場所に移設致しました。当初の和室に設置されておりました巧妙な造りの欄間は、リビングの間接照明として新たな役割を加えて再生されました。
リビングでは、建物の雰囲気に合わせて木製サッシを取り入れ、お庭への開放感を高めました。また、天井は既存の梁が見える高さに設定し、開放感のある空間の中に、重厚な梁がアクセントとなりました。
住み継いで来られたご先祖様の想いや、現代では再建が難しい、創建当初の材料・技が生み出す建物の魅力を引き継ぎつつ、これから住み継いでゆく方々の想いも大切に、心地よさや快適性、安全性を兼ね備えた民家へと生まれ変わりました。
CASE 09
O邸 民家再生工事 茨城県小美玉市 2016
「小さな家」
我が家は大正期のもので、築90年ほどの古民家である。冬は隙間風、家が傾いているため、ほとんどの戸の開け閉めもままならず、居住不可に近い状態の家だった。取り壊して小さな家でも建てて、息子に引き継ごうと考えていた。そんな中、千葉に住む息子の意見は、「自分は新しい家には興味はない。それよりもこの古い家に愛着を持っているのでこれを直してほしい。そうすれば自分が将来はこちらに帰って守りたい。」というものだった。茨城には住んだこともない人間が、古民家に愛着をもってくれていることが嬉しかったし、一も二もなくその方針に賛同し今回の古民家再生がスタートした次第である。
幸い工事が進むにつれて、古い家に新しいものが乗っかり、古民家が再生の受け皿として機能していることが確認できた。吉田建築計画事務所をはじめとした関係者の尽力により、出来上がりは、思った以上に古いものと新しいものがマッチングし落ち着ける家になった。
もしかしたら解体され、跡形もなくなっていたかも知れない家が蘇り、息子たちと次の100年をめざしていくのだろう。先人にも思いをいたし、報告しておこう。
所 在 |
茨城県小美玉市 | |
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創 建 |
大正13年 | |
建築面積 |
97.91㎡(29.62坪) | |
延床面積 |
107.23㎡(32.49坪) | |
構造・用途 |
木造2階建て | |
竣 工 |
2016年 12月 | |
担 当 |
吉田・大津 | |
設 計 |
吉田建築計画事務所 | |
主な外部仕上 |
屋根:日本瓦葺き 外壁:漆喰塗り、簓子下見板張り |
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主な内部仕上 |
天井:杉縁甲板・竿縁天井 壁:珪藻土塗り |