立地
北茨城の家は、三方を阿武隈山系の山々に囲まれ、北東側にひらけて集落が点在し、敷地正面には田畑が広がる日本の原風景といえる地味豊かな立地。また敷地内には江戸後期頃と思われる長屋門がある。
再生への思い
施主のO氏より、再生にあたってのお話の中で「将来、子供たちに故郷と思える家を残したい」との思いを伺いました。
明治後期に建てられたとされ、築110年ほど経過している住まいを、3世代6人の暮らす新たな生活の器として、また次世代へと引き継がれることを視野に入れ計画しました。
現状把握と課題
再生にあたり現地調査をさせて頂き、老朽度及び増改築の履歴等を確認し、次の提案をいたしました。メンテナンス性や意匠及び構造の面から創建時の大きさに減築する。茅葺き屋根から瓦屋根に変えた際に、負担の大きかった軒先き部分を金属屋根に変えて、軽量化を図ること。また当時の建物としては比較的高さがあることから、南側に土庇を設置して縁側的空間を設け、庭と室内の一体感と真夏の日射を遮る事。
プランの考え方
間取りは、主構造を活かしながら一新しました。玄関から続くホール(南北方向)と新たに設けた中廊下(東西方向)をクロスさせ、4つのゾーンに分けました。南側の和室と奥座敷と広縁は一体的に改修し、客間空間から家族みんなが集う広々としたDK・リビングとしました、伝統的な和の構成は残しつつ、洋の生活スタイルを入れ込みました。その際、古い天井を外して小屋裏の大きな手斧削りの梁を現して天井を高くしました。また、外部に設けた縁側(デッキテラス)を介して前庭とゆるやかに繋がり、室内からも季節の変化を楽しめるよう試みました。
南西側を御両親のスペースとし、中廊下の北側へは水廻りと子供室、主寝室と附室をそれぞれ古民家の風情を残しつつ、機能性を重視したプランとしました。併せて、中廊下の上部にトップライトを設け、暗くなりがちな建物中心部に彩光と通風を確保し、家中どこに居ても自然の光と風を感じることの出来る環境を目指しました。
建具や造作材も再利用
既存の建具、欄間、床の間、書院は移設して再利用しました。新旧の異なったデザインの建具は、舞台装置の様に室内全体に変化を与え、シンプルな間取に対して奥行き感を感じさせてくれます。
懐かしさと未来を感じるデザイン
外部は白い漆喰壁と既存の下見板張りを復元、屋根はいぶし瓦葺とし軒先は金属板で葺きました。
北茨城地方の伝統的な設えと風情、先祖からの歴史を大切に継承しつつ、大きなガラスや金属屋根などモダンな雰囲気を加え、新しい住まいには無い、長い時間軸の中で醸し出される豊かな味わいのある住まいへと再生しました。
伝統的技術と最先端技術
再生工事にあたっては、曳家、大工、建具、左官、家具、屋根、塗装には伝統的技能を有する職人と、一方で耐震性、温熱環境、省エネ(照明・空調・設備機器)、金物(建具・家具)など最先端技術の両面取り入れての施工が必要とされました。多くの職人さんと現場監督さんには大変お世話になりました。
CASE 14
北茨城の家 古民家再生工事 茨城県北茨城市 2019
所 在 |
茨城県 北茨城市 | |
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創 建 |
明治後期頃 | |
敷地面積 |
1,407.0㎡(425坪) | |
建築面積 |
185.18㎡(56.02坪) | |
延床面積 |
170.52㎡(51.58坪) | |
構造・用途 |
木造平屋建て・専用住宅 | |
竣 工 |
2019年(工期12か月) | |
設 計 |
(有)吉田建築計画事務所 | |
担 当 |
吉田・大津・石井 | |
その他 |