既存建物
茨城県常陸太田市の幹線道路沿いにある集落内に位置し、敷地入り口には冠木門、続いて土蔵、その奥にお母屋が建っています。
母屋は、昭和56年に施主の祖父(故人)が建てられ、築41年(令和4年時点)をむかえます。木造2階建・入母屋屋根の重厚な日本家屋で、室内は大きな玄関を入ると南側に八帖二間(客間空間)と和室の前面には4尺幅の廊下が鍵の手に廻り、大黒柱や差し鴨居が存在感を示します。そして家族の生活の場は、玄関の北側及び東側にレイアウトされた典型的な日本家屋の間取りです。
伝統の良さと快適性の融和
この住宅を住み心地の良い2世帯住宅へとリノベーションしたいとの相談を頂きました。そこで建具の開閉によって可変する空間や、大黒柱や差し鴨居など伝統的日本家屋の良さを残しつつ、親子2世帯の快適なライフスタイルの実現と、プライバシーの確保、一方で玄関及び和室(十帖)、2階は共有化し、緩やかにつながる暮らし方と、併せて耐震補強、温熱環境の改善、急な階段を改修する提案をしました。
それぞれの暮らし方
南側の客間空間は、廊下を含めて子世帯の生活の中心となる、27帖ほどの広々としたLDKへ、キッチンはアイランドキッチンとし食品庫も設け、小さなお子さん3人の子育て世帯がゆとりある空間で生活できる設えとしました。浴室・トイレ等の水廻りは寝室に隣接した北側へ集約しました。
南東側を親世帯の1LDKの空間とし、水廻りも含め動線をコンパクトにまとめ、またバリアフリー化を図りました。共用部分である急な階段を、緩やかな廻り階段へと付け替え、小さな子供たちも安全・安心に利用できるようにしました。
耐震化と温熱環境の向上
重い瓦屋根を葺き替え軽量化(棟瓦を低く、鬼瓦を小さくする、役物瓦を減らす等)をはかり、経年劣化等による柱や梁の補強し、開口部を減らし耐震壁を増やすなど耐震性能を高めました。また高性能樹脂サッシュと、高性能断熱材を敷き込み温熱環境を高めました。
伝統建築の未来への継承
床は桧材、壁は珪藻土塗の自然素材とし、天井の竿縁天井及び、差し鴨居は再利用。かつての客間の書院は玄関ホールへ移設しました。リノベーションにより、和の素材を活かした洋の生活スタイルが可能となり、新旧の木材が混じりあった一体感のある新たな空間へと変化しました。
こうしたデザインは、伝統木造建築のリノベーションならではの大きな特徴であり利点と言えます。地球環境問題も含め持続可能な社会の実現と共に、伝統木造建築を未来に継承する一つの方向性であると考えます。


