茨城県石岡市東府中。西に筑波山を望み、畑と平地林に囲まれた集落の一角に建つ親世帯のための離れ住宅です。
日本は世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでいます。本計画は、「同じ敷地で支え合う」という“近居”のかたちを建築として提示する試みです。
広い日本庭園を有する敷地内に、既存の母屋(子世帯)の隣に建てた小住宅。70代のご夫婦が、これまでの暮らしを大切にしながら、将来への安心も確保できる住まいを目指しました。
外観は庭園と数寄屋建築の母屋に調和させ、一文字瓦の切妻屋根と左官塗壁による和モダンとしています。新築でありながら、長年この土地に根付いてきたかのような佇まいを追求しました。
設計の柱となるのは「将来を前提とした自然なバリアフリー」です。
玄関ポーチから室内まで段差を排し、建具はすべて引戸。車椅子での通行幅を確保し、トイレや洗面室も余裕ある寸法としました。大切なのは“介護”のイメージではなく、心地よい住まいでありながら、身体の変化に静かに備える構成です。
建物中央には大きなワンルームのLDKを配置し、廊下を設けず移動負担を軽減。視線が抜け、家族の気配が感じられる開放的な平面としました。
無垢の柱・梁を現し、ヒノキの床と漆喰壁で仕上げた室内は、自然素材の調湿性と温もりに包まれます。日本庭園側にはデッキテラスとフルオープンサッシを設け、内外が連続する空間体験を創出。深い軒は夏の日射を遮り、身体にも環境にもやさしい住環境を実現しています。
高齢社会において大切なのは、「特別な場所」へ移ることではなく、「住み慣れた場所で暮らし続けられること」。
本住宅は、家族が緩やかにつながりながら自立を保つ、新しい高齢期の住まいのモデルです。








