
体調が優れない子どもにとって、家族と離れて過ごすことは想像以上に不安とストレスを抱え、保護者にとっても、それは同様であると思います。しかし、仕事や家庭の都合で、どうしても子どものそばについてあげられない状況は起こり得ます。そのような中で、子どもの不安を少しでも無くすことが出来る園舎づくりを基本的な考え方として、設計をスタートしました。
外観は子どもたちが「あそこへ行ってみたい」と思えるよう、家庭の温かさを感じられるような、小さな家並みの連なりをイメージさせるリズミカルなデザインを考えました。
建物の内部は、無垢の木をふんだんに用いて、手触りや足触りのやさしさと精神的な安定感を考慮し、回復期の子どもが心地よく過ごせるものとしました。
高い天井によって、広がりを持たせた保育室にはトップライトを設え、明るい陽の光が降り注ぐ健康的な環境を創出しました。保育室の他には、主に乳児を対象とした観察室、インフルエンザなどの感染防止を目的とした隔離室があります。ここは、玄関、トイレ、洗面室を専用としています。
また、先生方との意見交換を通して受け入れる子どもの人数や症状が異なる特性に対応できるよう、効率の良い間取りと、引き戸を多用した可変性のある空間を提案しました。この引き戸には大きな窓を設け、子ども達の様子が保育者の目に届くよう配慮しています。

建物正面。小さな屋根が幾重にも重なり合うようなリズミカルなデザイン。子どもたちが中を覗き込みたくなる外観としました
高い天井と木質感溢れる保育室。トップライトからは明るい光が降り注ぎます。素足でも気持ちの良い無垢フローリングを使用
保育室。引き戸の開け閉めで部屋の大きさを調整できる。引き戸を開ければホールと一体となり広々した空間に
保育室とホール。無垢の木と自然素材による素朴な雰囲気に。壁はぶつかっても安心な柔らかい木材を使用
隔離室
隔離室と隣接する専用洗面室とトイレ。奥に見える専用玄関から直接出入りが可能
観察室。無垢材は素肌で触ると柔らかで温かく、優しさを感じます。木の香りや視覚効果は気持ちをリラックスさせ、情緒を安定させる効果があります
受付・事務コーナーは保育室等に見渡しが利くよう配置。玄関と窓で繋がり受付もスムーズ

病児室「もみの木」 園長 内田 みち子
「木のやさしさにつつまれて」
鹿嶋市子育て事業の一貫として病児保育園開設が決まり、私ども医療法人がその仕事をお受けすることになりました。小児科医院として長い間、働くお母さんやその子ども達を見て参りました。仕事を休めないお母さんが安心して病児を預ける事の出来る施設が必要であると日頃から感じていました。お母さんに代わり、保育士と看護師が一日病児のお世話をいたします。
園舎を建てるにあたり、かねがねご御高名をうかがっていた吉田先生にお会いしました。初対面で、その誠実なお人柄と仕事にかける思いやエネルギーを強く感じました。とりわけ天然木を使った建物に対する知識の高さ、思いの深さを知り、私どもは木材に対する認識をすっかり新らたにされました。
木の持つぬくもりや強さ・香りの中で病児のお世話をしたいと痛切に思ったのです。今、建物は完成し、玄関のドアを開けると一瞬にやさしい木の香りに包まれます。病気で学校や保育園をお休みした子ども達はここで一日を過ごします。
子ども達に緊張感や閉塞感を与えない配慮から天井は高く吹き抜けになり、天窓からも光がそそがれます。建物中央の保育室からは、全方向に視点が届くように他の部屋が配置され、保育者は安心して保育をすることができます。感染症の子どもは、完全に他との接触なく過ごす事の出来る隔離室も作って頂きました。吉田先生ならではの細かいご配慮・子ども達の心にも思いを致してくださいました。
静かで木の香りいっぱいな森の雰囲気さながらの空間に鳩時計がやさしく時を刻みます。吉田先生の思いの詰まったこの施設に、先生への敬意と感謝の意をこめて「病児室 もみの木」と名付けました。
森の中の大きな木、その枝葉に、沢山の生命を育み木かげには人が憩う…そのようなイメージを心に抱きながら、温かな心通う良い保育をして参りたいと思っております。