敷地は広くは狭山丘陵地に属する武蔵村山市に有り、周辺は戸建て住宅が立ち並ぶ住宅地の一角に位置しますが、かつての豊かな農地の名残として、現在も敷地北側は果樹園、東側には狭山茶の茶畑が広がるなど、比較的自然環境に恵まれた場所に立地します。
本園はそうした環境のもと、「木育」をテーマに子供たちに地元の森で育った木々に触れて、その大切さや温かさを肌で感じながら、自然ともに育つ園舎づくりを柱に、地域産材である多摩産木材を主に使用する木造建築(準耐火構造)といたしました。多摩地域から生産される多摩産材 (スギやヒノキ)は、木材の供給などをはじめ水や大気の浄化、二酸化炭素の吸収など生態系の循環や、災害防止などの様々な機能を有しています。
非認知能力の発達する乳幼児期に、そうした森の木々に触れ肌で感じ、自然の大切さや木の良さを体験・経験することは、豊かな感性を育み心身ともに健やかな成長へ繋がることが期待できます。
室内は床、柱、手すり、家具等。屋外もデッキテラスや外壁等、子供たちに触れる場所へ多摩産木材を多用しています。
建物は高さを抑えつつ、東南側に広がる茶畑を囲むように各保育室レイアウトすることで、緩やかにカーブする大開口から、茶畑を通った陽の光やそよ風が優しく室内へと注ぎ込まれています。また園舎周辺には地元に樹生する木々を植え、ポケットパークを設けています。
地域の風土や景観と調和した保育の場を創出することで、子どもたちが生き生きと生活できる保育環境づくりを目指しました。いつの日か子どもたちの心の原風景となる事を願っています。
CASE 19(木造園舎)
みらい保育園 木造2階建(準耐火建築物) 新築工事 東京都武蔵村山市 2021
みらい保育園 園長 小川 香代子
「木造園舎を建ててみたら」
みらい保育園は東京多摩北部の武蔵村山市にあります。都下にありながら、かつてはお茶や養蚕業さかんな町だった名残で今も緑豊かなところです。
昭和52年に建てられた園舎の老朽化が目立ちはじめたため、5か年計画で建て替えをすることになり、移転のために近隣に土地も取得しました。(取得した土地も、もともとはお茶畑でした。)すぐ前には梨園があるロケーションのため、この場所に建てる園舎は、周囲の自然や今ある雰囲気をそこなわないような園舎にしたいなと漠然と思っていましたが、これまでの園舎がRCの3階建で小学校を思わせる直線的な建物で園児数も多いのでどんな建物がしっくりくるか、とても悩んでいたところでした。
そんな時に出会ったのが吉田建築計画事務所のホームページです。吉田所長の古民家再生プロジェクトや木造保育園の建築事例を見させていただき、木造園舎こそ、ここの場所に合う園舎になる!。そこからは迷いはありませんでした。
新園舎には、「地産地消」床材を中心に多摩で育った檜をたくさん使っていただきました。朝の出勤時の楽しみは、何といってもこの檜の香りです。ドアを開けた瞬間が一番よい香りがします。檜は癒しの効果があるといわれていて入浴剤にもよく使われていますが、まさにそのとおりで、子どもたちはすぐに新園舎に慣れ、お気に入りの場所をみつけ、よく遊び、よく眠ります。また、音の響きは柔らかく、反響もいいので子ども同士の小さな話し声もよく聞き取ることができますし、吸湿効果が高いので雨の日もとても気持ちよく過ごせています。
自然の木の色と東側からの採光でいつも園舎内が明るく、円形状のため保育室は仕切りを外すと全部つながるので一体感があり、子どもがどこからでも見える安心感があります。そして、2階の保育室、西側の高い窓からは青い空や雲の流れをじっくり見ることができ、時に窓がフレーム代わりになってまるで一つのアートのよう。雨の時の雲の色、晴れた時の空の色を室内にいても感じられる子どもたちはつくづく幸せだなと思います。
地域の方からも「立派な園ができましたね 」と声をかけていただくことが多いので、新型コロナが落ち着いたら、保育の枠にとらわれず、老若男女問わず気軽に立ち寄れる場所として地域に根ざした園づくりに取り組んでいきたいと思っています。
このような素敵な園舎を考えてくださった吉田所長をはじめ吉田建築計画事務所の皆様には心から感謝しています。
事業主 |
社会福祉法人 慶祥会 | |
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施設名 |
みらい保育園 | |
所在地 |
東京都武蔵村山市2丁目38-1 | |
用途地域 |
第1種低層住居専用地域 | |
地域地区 |
市街化区域 | |
主要用途 |
保育園 定員181名 | |
工事種別 |
新築 | |
構 造 |
木造(KES工法) 階数:2階 準耐火建築物 | |
竣 工 |
2021年 3月 | |
敷地面積 |
2513.53㎡(758.82坪) | |
建築面積 |
939.08㎡(284.07坪) | |
延床面積 |
1376.66㎡(416.40坪) | |
設 計 |
㈲吉田建築計画事務所 | |
担 当 |
吉田・児玉 |